倉庫にバスケットコートは作れる?|天井高・割付の向き・結露と、200㎡超で要る確認申請
「使っていない倉庫をバスケットコートにしたい」という相談があります。
費用の面では、倉庫はかなり有利です。床に土間コンクリートが打たれていることがほとんどなので、費用の大半を占める下地工事が要りません。いちばん高い工程が最初から終わっている状態です。金額の目安は別記事にまとめています。
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この記事で扱うのは、そこではありません。倉庫の案件で実際に詰まるのは、費用ではなく条件のほうです。順に5つ挙げます。冒頭の写真が、条件をすべて満たしたときの標準的な形です。
INDEX目次
1. 天井高|規格は7m、設備だけで約4m使う
最初に測るのは天井です。ここで入るか入らないかが決まります。
FIBAの規則には、はっきり数字が書かれています。Official Basketball Rules — Basketball Equipment の11.4項です。
The height of the ceiling or the lowest obstruction above the court shall be a minimum of 7 m.
FIBA Basketball Equipment 11.4
コート上の天井、または最も低い障害物までが7m以上。「天井」ではなく「最も低い障害物まで」と書いてあるのが重要です。倉庫の天井が7mあっても、梁・クレーンのレール・配管・照明器具・スプリンクラーのヘッドがそれより下に出ていれば、その高さが基準になります。
もっとも、7mは競技用の数字です。家族やチームの練習用なら、そこまで要りません。ただし設備そのものが高さを使います。
| 項目 | 規格 |
|---|---|
| リング上端の高さ | 3,050mm |
| バックボードの寸法 | 1,800 × 1,050mm |
| コート上の天井・最低障害物まで | 7,000mm以上(競技用) |
リングの上端が3,050mm。そこからバックボードが上へ伸びるので、ゴールの設備だけで床から約4m使います。その上にシュートの弧が乗ります。倉庫で天井4m台なら、ゴール下とハンドリングはできてもシュートは打てません。5m台から普通のシュートが成立し、7mあれば規格どおりです。
先に脚立とメジャーで、梁の下端までを測ってください。図面の階高ではなく、実測です。
2. 割付の向き|ゴールは壁に付け、壁に沿って15mを取る
天井が通ったら、次は向きです。ここを間違えると、面積は足りているのに使えないコートになります。
3×3の正規サイズは横15m × 縦11mで、ゴールは横15mの辺の中央に立ちます。この形が決まっているので、割付も1通りに決まります。
- ゴールを壁に付ける。バックボードが壁を背にして室内を向く
- その壁に沿って15mを取る。コートの長い辺が壁と平行になる
- 奥行き11mを室内側へ出す。プレーの向きは、壁から室内へ
冒頭の写真がその割付です。壁際にゴールが立ち、そこから左右へコートが広がって、柱の内側いっぱいまで敷き詰められています。
逆に、壁から離れる方向へ15mを伸ばすとどうなるか。倉庫は長手方向に長いので、一見そちらのほうが入りそうに見えます。ただ壁に沿った幅は11mで足りる代わりに、奥行きを15m食います。そしてプレーの向きが建物の奥へ向くので、シュートを打つ位置の後ろに柱・荷物・シャッターが来ます。ボールが転がっていく先が作業スペースになる、ということです。
柱の内側に収める
鉄骨造の倉庫は、柱が一定のスパンで並んでいます。コートの外周は、その柱の内側に収めてください。柱がコートの中に立つ割付は、面積の計算上は成立しても実際には使えません。ドリブルで詰めた先に柱があるコートは、一度ぶつければ誰も使わなくなります。
スパンが足りず15mが取れない場合は、幅を削って奥行きを優先します。狭い敷地とまったく同じ判断です。
ゴールのベースは、ベースラインの外に置く
公式規格では、バックボードの面はベースラインの1.2m内側にあります。埋め込み式だとこの1.2mをコートの内側で使うことになりますが、タンク式(移動式)はベースを壁際に寄せられるので、1.2m分をコートの外へ出せます。同じ面積でもリングの前を1m以上広く使えるという差です。ただしこれは、壁とコートの間にベースの奥行分(1.2m前後)の床が残っている場合の話です。壁にぴったり寄せたいなら、その1.2mも倉庫の床から取ることになります。
冒頭の写真も、黒いベースがベースラインの外側、壁との間に載っています。壁付けのゴールなら、この分をさらに詰められます。
3. 床の不陸|土間コンクリートは平らではない
倉庫の土間コンクリートは、水はけのために勾配が付いていたり、フォークリフトの走行で局所的に沈んでいたりします。この凹凸を「不陸(ふろく)」と呼びます。
タイルは置くだけで敷けますが、下の不陸は消してくれません。そのまま拾います。数mmの段差ならパネルの連結で馴染みますが、それを超えると敷いた面がたわみ、ドリブルのバウンドが不規則になります。歩いたときに「カタッ」と鳴る箇所が出るのも同じ原因です。
確認のしかたは単純で、2mほどの直定規かレーザーを当てて、隙間を見ます。気になる沈みが見つかったら、その部分だけモルタルで均してから敷きます。全面をやり直す必要はありません。部分補修で済むかどうかを先に切り分けるのが安いやり方です。
4. 結露|屋内だから起きる、屋外には無い問題
これは屋外の案件では出ない話です。
断熱されていない倉庫では、外気が急に暖かくなる時期に、冷えたコンクリートの土間の表面が結露します。春先の朝、床が濡れているあれです。屋外なら地面に浸みるか流れていきますが、屋内には行き先がありません。タイルの下に水が残ります。
コート用のインターロッキングタイルは水が抜ける構造なので、水が溜まって腐るということはありません。ただ、床とタイルの間に湿気が残り続ける環境だと、隙間から埃を巻き込んでカビや臭いの原因になります。
対策は難しくありません。結露する時期だけ換気を回す、シャッターを開ける時間を作る、季節の変わり目に一度めくって乾かす。タイルは工具なしで外せるので、めくって乾かすという選択が取れるのが強みです。下地に接着してしまう工法では、この手が使えません。
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5. 音|屋外とは逆に、反響が問題になる
屋外の庭コートで問題になるのは、音が外へ広がって近隣に届くことでした。倉庫は逆です。音が外へ逃げず、鉄板の壁と高い天井の間で反響します。
反響した音は元の音に遅れて重なるので、ドリブルとシューズの音が途切れずに残り、その帯域に声が埋もれます。近隣への迷惑という意味では屋外より楽ですが、使う側の快適さという意味では対策が要ります。
床材で接地音の角を落とすのは、ここでも効きます。壁に吸音材を全面に張るのは費用がかかるので、まずは床から入るのが順番として正しいです。
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200㎡を超えるなら、用途変更の確認申請を調べる
ここは面積で線が引かれるので、先に書いておきます。
建築基準法第87条第1項は、建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物にする場合、確認申請の規定を準用すると定めています。そして第6条第1項第一号が指すのは、別表第一(い)欄の用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものです。
バスケットコートはどこに入るか。建築基準法施行令第115条の3は、別表第一(い)欄(三)項に類するものとして「スポーツの練習場」を挙げています。つまり倉庫(五)項からスポーツの練習場(三)項への用途変更です。
確認申請が免除される「類似の用途」(施行令第137条の18)も見ておきました。11の組み合わせが列挙されていて、第七号に「体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場」があります。倉庫はこの11項目のどこにも入っていません。したがって免除は使えません。
- コート部分が200㎡以下:この確認申請は不要(ただし他の規定は別途かかります)
- 200㎡を超える:用途変更の確認申請が必要になる前提で進める
もう一つ、用途地域の制限もあります。別表第二では「スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類する運動施設」が地域ごとに制限されています。倉庫が建っている場所が工業専用地域などの場合、面積に関係なく運動施設として使えないことがあります。
ここまでを踏まえて、率直に書きます。この記事は条文と考え方を整理したもので、法律相談ではありません。個人が自分の物置で家族と使うだけのケースが「用途変更」に当たるかどうかは実態で判断され、特定行政庁によって見解が分かれます。規模が200㎡に近づくなら、着工前に建築士か、その市区町村の建築指導課に図面を持って相談してください。あとから言われるより、先に聞いたほうが安く済みます。
なお消防法の側(消防用設備や避難経路)も別に関わります。人を集めて使う計画なら、そこも同時に確認する話になります。
サイズを決めたら、金額はその場で出せる
条件が抜けられたら、あとは面積の話です。倉庫の内寸を測って、MAKACのサイト内ツールに幅と奥行きを入れてください。タイル代・送料・関税・外周のエッジパーツまで含んだ総額が、その場で出ます。
先に完成した姿を見ておきたい場合は、タイルの色とラインを選んで図にできます。倉庫なら壁の色と合わせた配色も試せます。
タイルは5モデルあり、衝撃吸収と価格が違います。屋内なら紫外線劣化を考えなくていいので、選ぶ基準も屋外とは変わります。
ただし、シミュレーターで金額が出るのは210㎡までです。3×3の正規サイズ(165㎡)は入りますが、それを超える倉庫は1件ごとに送料と手配が変わるので自動では出せません。測った寸法をそのまま送ってください。なお210㎡は、確認申請の200㎡ラインとほぼ同じ規模です。超える計画なら、金額の相談と法規の確認は並行して動かすことになります。
逆に、まず小さく試したいなら、必要な広さは思われているより狭いです。
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敷く作業を自分でやるか業者に頼むかの切り分けは、下記にまとめています。
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まとめ
- 倉庫は土間コンクリートがあるので費用面では有利。詰まるのは条件のほう
- 天井は「最も低い障害物まで」を実測する。規格は7m、設備だけで約4m使う
- 割付はゴールを壁に付け、その壁に沿って15m、奥行き11mを室内へ。コートの外周は柱の内側に収める
- 土間の不陸はタイルが拾う。直定規で当たりを見て、沈んだ箇所だけ均す
- 結露は屋内特有。めくって乾かせるのが置くだけ施工の強み
- 音は外に漏れないが中で反響する。床から手を付ける
- 200㎡を超えるなら用途変更の確認申請。用途地域の制限も別にある。着工前に建築指導課へ
出典
- FIBA Official Basketball Rules — Basketball Equipment(PDF)|11.4 天井高、1.1.3 バックボード寸法、1.2.4 リング高
- 建築基準法(e-Gov 法令検索)|第87条 用途変更、第6条第1項第一号、別表第一、別表第二
- 建築基準法施行令(e-Gov 法令検索)|第115条の3(スポーツの練習場)、第137条の18(類似の用途)
条文と数値は上記の原典で確認できます。面積・用途地域・既存建物の状況は案件ごとに違うので、判断は必ず図面を見てもらってください。